病原性大腸菌感染症
腸管出血性大腸菌(ETEC)はベロ毒素(志賀毒素)を産生し、血便や尿毒症症候群を起こす菌で、1996年に大阪府堺市でO157による大規模な集団感染があり、3名が亡くなっています。2011年には富山県の焼き肉チェーン店でO111に汚染されたユッケが原因の食中毒(5名死亡)、そして昨年北海道でO157に汚染された白菜の浅漬けが原因の集団感染があり、8名が亡くなっています。海外では2011年ドイツで50名が死亡した大腸菌O104の集団感染が発生しました。当初はこちらでも腸管出血性大腸菌O104:H4と呼ばれていましたが、その後の調査で腸管凝縮性大腸菌(EAEC)にベロ毒素(志賀毒素)を産生する能力が加わった毒性の強い新型の大腸菌であることがわかり,志賀毒素産生性大腸菌(STEC)と呼ばれています。従来ETECは動物の肉を食して感染することがよく知られていましたが、ドイツの事例ではエジプト産の種子を使ったドイツ産のスプラウト(もやしなどの新芽野菜)が、また北海道では白菜の浅漬けと、生肉類以外でも注意が必要なことがわかりました。また予防方法や治療法も進歩してきていますが、一般の方々や、また食品を扱う業者においても認識が薄れてきており、その対策が徹底されていないこともわかりました。今後も集団発生には十分な注意が必要であると思われました。

大腸菌感染症については、生レバーは食べることができなくなりましたが、まだ鶏肉の刺身などを提供するところもあるので、子供(特に12歳以下)に生肉を食べさせることは絶対にやめましょう。また野菜も流水で十分に洗ってください。もちろん手洗いをすることは基本中の基本です。
今後の病気治療法や病原菌解析方法の研究のために、当院ではお子様の便の提供をお願いすることもございます。お声をおかけした際にはご協力の程よろしくお願いいたします。